天使の舞―前編―【完】

「キャスめ･･･。」


そのたった一言と、深紅の瞳からは、アマネの切羽詰まった感情が伝わってきて、乃莉子の恐怖心は更に煽られた。


アマネはただ静かに呟いただけなのに、とてつもない威圧感が、周りの空気を圧迫する。


もう一度乃莉子を、興味なさげに見つめてから、アマネは何も言わずに、窓から再び舞い降りて行った。


そして、城の外にいた者たちに、淡々と指示を出すアマネの姿は、やはり王子の威厳に満ちていた。


「キャスパトレイユを追え。
生きたまま捕らえるのだ。
魔界の者に手を出したらどうなるか、目にモノ見せてくれるわ。」


静かな怒りが、悪魔たちにも伝わるのだろう。


皆、腹の底から指示に従う声を出した。