天使の舞―前編―【完】
倒れているアマネを見て、シラサギはしゃがみこむ。


「アマネ様!アマネ様!」


その隙に、キャスパトレイユが乃莉子に駆け寄って、横たわる体を抱き起こす。


「乃莉子!大丈夫か?」


乃莉子が着けていたメルヘンのエプロンは剥ぎ取られ、シフォンのブラウスのボタンは、外されていた。


「乃莉子。
おい…乃莉子!」


術をかけられていても、乃莉子の瞳からは、止めどなく涙が溢れていた。


ぐったりと体の力は抜けて、キャスの腕の中にあっても、身動ぎする事すら、できないでいるのに。


そして、その瞳には光がなく、言葉も発する事はなかった。


どれ程の恐怖が、乃莉子を支配していたのだろうか。


乃莉子への仕打ちに、キャスパトレイユは心が震えた。


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