天使の舞―前編―【完】
「あらまぁ!何かしら?」


シンシアは、質問された事を楽しむかの様に、ころころと笑った。


「王妃様は何故…」


アマネが、そこまで言いかけた時だ。


「ウェルザ!
俺を呼びつけるとはなんだ!
覇王とはそんなに偉いのか?」


低く響く、威圧感のある重低音が聞こえてきた。


天魔の鏡を抜けて、専用通路からやって来た、魔王アカツキの声である。


アカツキの口調には、少し苛ついた感じが伺えて、アマネの体には、一瞬にして、緊張が走った。


しかし、アカツキの目に最初に飛び込んだのは、アマネではなかった。


「シンシア…!」


威勢よく謁見の間に入って来たアカツキは、ピタッと足を止めてシンシアに釘付けになった。


「父上…。」


静かに呼びかけられて、アカツキはゆっくりと声のする方へ振り向く。


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