天使の舞―前編―【完】
その場にいた者達が、失神してしまいそうな程の、心からの魔王の叫びであった。


ふわふわと、柔らかな波打つ髪を揺らして、シンシアは小首を傾げた。


「ねぇアカツキ。
アマネに覇王になる事を、強いてはいないでしょうね?
そんな事をしたら、あなたの二の舞になってしまうわよ。」


「笑止…。
アマネには、日々覇権を取れと、言い聞かせてきた。
ついでに、王子の妃も奪えと、命令もした。」


流れるような所作で、用意されていた豪奢な椅子に腰かけたアカツキ。


足を組みかえて、これ見よがしにシンシアに吠えて見せた。


「キャスパトレイユの妃を人質にして、シンシア…お前を魔界に呼ぶつもりだった。」


「アカツキ。
私にはもう、何の利用価値もないのよ。
何のために私を必要なの?」


シンシアは悲しみの表情を、アカツキに送った。


ウェルザは軽く渋い顔をしたものの、まだ沈黙を守ったままでいる。


黙って王達を静観していたキャスだが、実は口を挟みたくてうずうずしていた。


アマネはシラサギの肩に手を置いて静かに下を向いているが、心には秘めた思いがあるようだった。

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