天使の舞―前編―【完】
難しい顔で、無言でいたウェルザだったが、その閉じていた口を静かに開いた。


「アカツキ。
お前はこの長い間、ずっとシンシアを想い、苦しんでいたのか?
私は、覇王になれなかった事が、お前を苦しめていたのだと思っていた。」


ウェルザは一旦言葉を区切ったが、ポツリと呟いた。


「それと・・・この事とは関係ないのだが、次の覇権は魔界に託したい。」


アカツキの瞳が、スッと細まる。


「バカにされたもんだ。
天界のおこぼれも、同情も要らぬ。
アマネは実力で、覇王になれる男だ。」


アカツキが、息子に視線を投げた。


「父上・・・。俺は・・・。」


アマネがゆっくりと顔を上げる。


「父上俺は、シラサギを妃に迎えたいのです。」


「アマネ・・・お前、自分が何を言っているか、分かっているのか?
俺の意に背くのか?
お前は覇王になるのだ!
メイドを妃にしたいだと?
言語道断!」


「父上は間違っています。
乃莉子を取引の道具にすることも、天王妃様を手に入れようと企んでいる事も。」


予想外の息子の言葉に、怒りで椅子から立ち上がり、アマネを睨みつけているアカツキを、ウェルザが制した。


「まぁ、落ち着け。
なに…。
紐解けば、簡単なこと。」


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