天使の舞―前編―【完】
「キャスパトレイユ様!
やっと見つけました。
人間界からのお帰りを、待ちわびていました。
お会いしたかったです。」


嬉しそうに響く女性の声が、乃莉子の耳にも飛び込んできた。


「ライラ!?
何でお前、こんな所にいるんだよ?帰れ!
俺は、妃に用事があるんだ。」


「え~!
本当に連れて来ちゃったんですか?
キャスパトレイユ様ったら、あんなに人間を妃にするの、嫌がってらっしゃったのに。
信じられません。」


「ばか!黙れ!帰れ!」


キャスパトレイユは慌てふためいて、扉の向こうの乃莉子を気にしながら、隣にいるライラに罵声を浴びせた。


「乃莉子!乃莉子!
誤解だ!!
違うんだ!!!
聞いてくれ!!!!」


取り乱すとは、この有り様の事を言うのだろう。


滑稽な程に、天界の王子は、扉に張り付いていた。

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