天使の舞―前編―【完】
閉めた扉に背中をもたれかけて、乃莉子は大きく息を吐き出した。


「私だけを愛してるだなんて・・・。
何よ。嘘つき。」


そのまま扉に背中を滑らせて、乃莉子は床の上に、腰を下ろした。


シンシアが、どんな意図で言ったのかは分からないが、女性達がキャスパトレイユを待っていると、口にしたとき、乃莉子の心臓はトクンと揺れた。


実際に今、キャスパトレイユがライラと居る所を目の当たりにして、乃莉子はギュッと胸が締め付けられるように、痛んだ。


キャスパトレイユに出会ってから、乃莉子は振り回されてばかりいる気がしてならない。


こんなに感情が揺れたのは、初めてで、乃莉子はこの胸の苦しさから、解放されたくて仕方なかった。


人間界に帰って、また元の生活に戻れば、キャスの事も気にならなくなるのかな。


そんな思いが、乃莉子の頭をよぎった。


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