天使の舞―前編―【完】
何処に行けばいいのかは、分からない。


知っている場所といえば、さっき居た謁見の間くらいである。


『行ってみようかな』


乃莉子は、記憶をたどって廊下を進み始めた。


曲がり角に来る度に、小首を傾げて考える。


悩みながら長い廊下を進んだが、一向に目的の場所に辿り着かない。


『さっきもここ、通ったような気がする。』


乃莉子は右往左往して、廊下をゆっくりと歩いていた。


「おや?
キャスパトレイユ様のお妃様ではありませんかな?
どうなさいました?」


困った顔で立ち止まっていた乃莉子に、たくましい声がかかった。


乃莉子が偶然出くわしたのは、シュカであった。


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