天使の舞―前編―【完】
「シュカさん。」


切ない表情で、乃莉子はシュカの名を呼んだ。


「おやおや。
もしかして迷ってしまわれましたか?
慣れない王宮をお一人で歩かれては、いけませんな。
王子はどちらに?」


乃莉子は切ない表情に輪をかけて、シュカを見た。


「さぁ・・・分かりません。
キャスはライラさんと一緒に、何処かへ行きましたから。」


「なんと・・・。」


シュカも切ない顔をする。


そして乃莉子は、キッと、表情を変えた。


「・・・それよりシュカさん。
お願いがあるの。
私を人間界に連れてって。」


「なんと!」


シュカは少し目を見張り、どちらの台詞にも驚いて、咄嗟に返事が出来ずにいた。


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