天使の舞―前編―【完】
キャスパトレイユは、どこまでも覇王になる事を嫌がって、人間界に降りる時期がくる前に、是が非でも天使の娘と恋仲になっておきたかったのだ。


妃が天使なら、覇王にならずにすむ。


そんな安易な発想だった。


キャスパトレイユの父である天王ウェルザが、いつもこぼしていた言葉。

『覇王になど、なるのではなかった。』

この言葉が、キャスパトレイユに、大きな影響を与えていたからである。


「乃莉子様。
人間界にお帰りになるのは、しばしお待ち下さいませんか。
キャスパトレイユ様にも、お考えがあるのです。」


シュカは、静かに取り繕った。

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