天使の舞―前編―【完】
キャスパトレイユは、王宮の長い廊下を、明るい色の緩い天然パーマを揺らして、足早に歩いていた。


窓から差し込む、穏やかな陽射しが、今は煩わしくさえ思える。


せかせかと動かしていた足は、いつの間にか駆け足になり、気がつけば全力で走り出していた。


行く先は王宮の中庭。


シンシアに会うのが、目的であった。


キャスパトレイユはやっと、まとわりつくライラを追い払い、自由の身になった。


元はと言えば、シンシアの言う通り、自分の撒いた種である。


覇王になるのが嫌で、手当たり次第、妃に相応しい娘はいないかと、声をかけては付き合ってみた。


しかし、キャスパトレイユの立場を知っている娘達は、純粋に恋愛を望むのではなく、どこかに打算が見え隠れして、キャスパトレイユを苛立たせただけであった。

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