天使の舞―前編―【完】
アマネと名乗るその青年は、クスッと口元を歪めた。


「乃莉子。
お前は天使を愛したのか?
お前が既に、天使に名を与えた事は、分かっている。
だから俺は、ここへ導かれてやって来た。」


青年はぐいっと、乃莉子の腕を掴んだ。


「魔王より命を受けた時はどうなるかと思ったが…。
悪くない。
決めたぞ…お前をキャスから奪う。
天使に覇権を、握らせはしない。
さぁ…俺に名を与えろ。
人間を妃にして、全世界を支配するのは、この俺だ。」


乃莉子は青年の整った顔に、憎しみにも似た感情が現れているのを見て、僅かな恐怖を覚えた。


「何で私なのよ?
天使だか、悪魔だか知らないけど、私を巻き込まないで。
手を離して。」


乃莉子は掴まれた腕を、軽く振り払った。
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