天使の舞―前編―【完】

その、乃莉子が連れて来たであろう“男”彼方は、興味深気にメルヘンの外見と店の中も覗き込んでから、乃莉子に尋ねた。


「本屋か。
何故、本屋なんだ？」


「私の勤め先なの。」


「ほぉ。」


感心したように相槌を打った彼方は、いつの間にか着ている服が先程と違っている。


彼方も悠と同様まるで魔法のように、着替えてしまっていたのだ。


白い清潔なシャツに黒い細身のパンツ姿の彼方は、とても悪魔とは思えない。


こんな出で立ちの彼方は、本当に爽やかで涼やかで知的で…。


それに、整えられた長めの黒髪と黒縁の眼鏡という見た目は、まるで雑誌から脱け出したモデルのようであった。


そんな彼方を、少しだけ嫉妬の眼差しで見ていた宮田。


いや、僕も負けてない！と、自分を鼓舞して彼方に話しかける。


「あのさぁ～、この僕が、先に広木さんと、話をしてたんだけどなぁ？」


勘違いも甚だしいが、自分をイケメンだと信じている宮田は、ここ一番のドヤ顔で彼方を見上げた。