天使の舞―前編―【完】
「悪いな。
先に行動したもん勝ちだ。」


彼方はそう言い残すと、乃莉子の入ったシャボン玉と共に、一瞬で消えた。


「こンの野郎…。」


店内の騒々しさに気がついて、宮田がテクテクと奥から出てきた。


「おやぁ。井上くぅん。
遊んでいた訳じゃあ、ないよねぇ?」


「遊んでねぇよ!
乃莉子が拐われたんだよ!」


事情の分からない宮田に声をかけてしまう程、悠は慌てていた。


「乃莉子?
さては、井上くんの彼女さんですかぁ?」


宮田はニヘラっと、粘りのある笑いを悠に向けた。


「はっ!?
まぁ確かに、あいつは俺の女だけど。
…分かんないのか?
広木乃莉子だぞ!」


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