天使の舞―前編―【完】
―――。
所変わって…ここは魔界。
王宮の中の重厚な一室だ。
“鏡の間”と呼ばれている部屋であり、その名の通り鏡のみを、収めるための部屋であった。
四方を壁が囲み、さほど広くない部屋の中央には、黒く艶めく台座の上に、楕円形の大きな鏡が一つだけ、重々しく置かれていた。
その鏡は『天魔の鏡』と呼ばれ、縦に2メートル、横に1.5メートル程である。
鏡面の回りは、赤と黒の炎の飾りで縁どられた、立派な鏡だ。
静かだった部屋の、重厚な沈黙が、予告なく破られた。
眠るように佇んでいた天魔の鏡が、鏡面を波立たせて、騒ぎ始めたのだ。
綺麗に磨かれ艶めいて、硬いはずの鏡面が、波打つように揺れている。
その波打つ中からゆっくりと、人影が浮かび上がってきた。
所変わって…ここは魔界。
王宮の中の重厚な一室だ。
“鏡の間”と呼ばれている部屋であり、その名の通り鏡のみを、収めるための部屋であった。
四方を壁が囲み、さほど広くない部屋の中央には、黒く艶めく台座の上に、楕円形の大きな鏡が一つだけ、重々しく置かれていた。
その鏡は『天魔の鏡』と呼ばれ、縦に2メートル、横に1.5メートル程である。
鏡面の回りは、赤と黒の炎の飾りで縁どられた、立派な鏡だ。
静かだった部屋の、重厚な沈黙が、予告なく破られた。
眠るように佇んでいた天魔の鏡が、鏡面を波立たせて、騒ぎ始めたのだ。
綺麗に磨かれ艶めいて、硬いはずの鏡面が、波打つように揺れている。
その波打つ中からゆっくりと、人影が浮かび上がってきた。