天使の舞―前編―【完】
ベットに無造作に放り出され、弾んだ自分の体への衝撃で、意識を取り戻した乃莉子。


そうっと、薄目を開けて辺りの様子を伺った。


グレーの寝具で統一された、温かみのないベットの上で、乃莉子はゆっくりと寝返りをうつ。


視線の先のベットの脇に置かれた椅子に、見覚えのある人物が足を組んで座っていた。


金の装飾が施された艶めく黒い椅子に座り、乃莉子を冷ややかな眼差しで見つめる青年は、紛れもなく魔界の王子であった。


機敏に上半身を起こして、乃莉子は彼方を睨んだ。


「どうゆうつもり?」


「どうゆう・・・とは?」


彼方は薄い笑いを浮かべた。

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