もう少し、このままで。
「…先輩…服が、透けてます」
「へ?」
次の瞬間、はっとした。
今日の服、白だ。
「…まじで?」
「マジです」
どうしよう。
着替えなんてもちろんない。
………ど、どうしよう。
「俺の服着ますか?」
考えあぐねいていると、頭上から落ちてきた彼の声。
「え?…」
「デカイと思いますけど、着ないよりマシですよ」
いや、君はどうするの。
「俺は今日の体育で使ったのを着るんで」
なるほど。
でも悪い、なんて考えているのを余所に服を脱ぎ出した彼。
引き締まった身体が露になり、どきっと心臓が鳴る。
「どうぞ?」
「あ、あり、がとう」
どぎまぎしながら礼を言い、受け取った服を服の上から着る。
ふわりと彼の匂いが鼻をかすめた。
…これ、やばい、なぁ。
ドキドキ、する。
「雨止みませんね…」
確かに。
「しばらくこのままだったりして…」
「えーやだなぁ」
「ですね…寒くないですか?」
「寒いね」
寒い。
濡れた服がどんどん体温を奪っていく。
思わず手を擦り合わせると、ふいに彼の匂いが濃くなった。
「?!」
「…こうすれば、ちょっとはマシですか?」
抱きしめ、られた?
いや、抱きしめられてる!!
「う、ん。あったかい、よ」
返事はしたけど、頭の中はパニック状態。
『?』がぐるぐるぐるぐるしてる。
でも、とりあえず思った。
……雨、もうしばらく降ってていいよ。
fin.