あたしは美味しくない!!



「……普段どんな食材で料理してるんだ?」

 ダネルに助け船を出されて、改めて考える。

「お母さんはいつも、お肉とかお魚とか野菜で料理してるよ」

「あー……じゃあ、鳥か魚でも採ってくる」

 カインはそう言うと、目を閉じて深く息を吸い込んだ。
 すると――耳が生え、尻尾が生え、みるみる骨格も変わっていく……。
 一呼吸分の間に、カインは大きな狼に変わっていた。
 ふと、カインがこちらを振り向いた。

「わっ……」

 反射的に、一歩あとずさってしまう。

「喰わねぇよ」

 人の姿の時よりしゃがれたカインの声だった。
 気分を害したような表情に、思い当たることがあって、一歩前に出た。


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