あたしは美味しくない!!


「……えっ」

 眠っているダネルを見て、思わず声をあげる。

「どうかしましたか?」

「……ダネルって、眠ってるんだよね?」

「ええ。そのはずですよ?」

「……目が、開いてるんだけど」

 それもバッチリと。まばたき一つせず、宙を見つめて横たわる様子はまるでーー

「死んで……ないよね……?」

 とても不安になって、すがるような思いでウィルに視線を向ける。
 ウィルは軽く肩をすくめて、苦笑いした。

「死んでませんよ。彼、不死身ですしね」

「あ、そっか。不老不死なんだっけ」

「僕たちも、初めて見たときは驚いたんですけどね。悪魔族は、全員その眠り方らしいですよ」

「そうなんだ。びっくりしたー」

 ほっと一安心して、そうっと、ダネルの頬をつついてみる。

 ーーぴくりとも反応しない……。

 何度かつんつんとつついてみるけど、まったく反応がない。

「……眠ってる、だけなんだよね?」

「……そのはず、なんですけど……」

 自信なさげに返されて、また不安が募る。
 ーーえ、ちょーー

「ダネル!?」

「なんだ」

「うわっ!?」

 声を掛けた途端に返事が返ってきて、大きく飛び上がってしまう。

「……あなた、いつから起きてたんです?」

「ああ、ミカがカインの尻尾を触ろうとして怒られてる辺りだな」

 ーーへ?それって……

「からかったのね!?」


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