あたしは美味しくない!!



「ふ、降ってきたって……なにが?!」

「酸性雨だ!木々の毒素をたっぷり含んだやつ!」

 カインは不愉快極まりない様子で叫ぶと、さっと狼の姿に変化する。

「ミカ!乗れ!」

「の、乗るって、背中に?」

「早くしろ!コートもすぐに溶けちまうぞ!」

 そうせき立てられて、慌ててカインの背中によじ登る。背中から首に腕をまわしてしがみついた。

「しっかりつかまってろよ!ーー先に行って、雨宿り出来る場所探してくる!」

 後の言葉は、ウィルとダネルに向けた言葉だ。言い終えるとすぐに、風のような速さで走り出す。
 振り落とされないようにつかまっているのがやっとだった。

 ーー走っていたのは、ほんの少しの間だったと思う。開けた場所に出たかと思うと、そこに、丸太を組んで作ったログハウスがあった。
 玄関前の、屋根の下に走り込む。

「この場所、二人に教えてくるから。お前はここで待ってろ」

 言ってすぐに、駆けだしてしまう。いつのまにか激しくなっていた酸性雨の水煙で、辺りがよく見えない。

「大丈夫、かな……」



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