あたしは美味しくない!!
過去を振り返るように、どこか遠くを見ながら、ぽつぽつと話し始めてくれる。
「僕、元々孤児で教会にお世話になってたんですけどね。町で、吸血鬼狩りが始まって、神父様が群衆のリーダーでした」
「吸血鬼狩り……?」
「ええ。僕が人間として生きていたのは100年近く前ですから。その頃は盛んに行われていたんですよーーそれが、よりにもよって教会に住む僕が吸血鬼になってしまいましたから、神父様も困っていました」
「どう、なったの?」
「神父様は優しい方でしたから、僕を町の外に逃がしてくれました。でも、町の外に出たことなんてありませんでしたし、それにーー」
一度言葉を飲み込んで、暗い顔をする。
顔を上げたウィルが浮かべたのは、出会ってから何度も見た、困ったような笑顔だった。