あたしは美味しくない!!



「ーー喉が渇いて、怖かったんです」

「……それって」

 皆まで言えずに口をつぐんでしまう。そんなあたしを見たウィルが、ますます困ったような笑みを深める。

「……吸血鬼としての飢えでした。いくら水を飲んでも治まらなくて、朝が眠くて仕方ありませんでした。ーー自分が吸血鬼になっていくのが、怖かったんです……」

「ウィル……?」

 うつむいてしまったウィルの肩に手をおいて、そっと呼びかける。
 あたしの方を向いて、にこりと笑ってくれた。

「町から出て数日は、ただただ不安で、怯えながら辺りをさ迷ってました。ーーそんな時、カインに会ったんですよ」

「それで仲良くなったの?」

 そう訊くと、おかしそうに笑い出してしまう。

「いえ。彼は、僕のことを嫌っていましたよ」

「嫌われてたの?どうして?」

「彼は、自分が魔物であることーーもとい、狼男であることに誇りを持ってますから。煮え切らない僕のことを『人間かぶれ』と呼んでいました」

「それが、どうして仲良くなれたの?」

「どうしてでしょうね。まぁ、彼はああ見えて面倒見がいいですから。魔物としてどう生きればいいのか分からない僕に、色々教えてくれました」

「カイン、やっぱり優しいね」

「ええ。子供っぽいですけどね、負けず嫌いで自信家で猪突猛進でーー」

「ちょ、ちょっとウィル?それ、ほめてる?」

「ほめてますよ?一応は」

 ーーそうは言ってるけど、すごく笑いながら……。でも、やっぱり仲良しなんだろうな。

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