あたしは美味しくない!!



「これでいいだろう」

 ダネルが、ポチっとボタンを一つ押した。

「えと、なんのジュース……?」

「果物の果汁だ。飲めないか?」

「あ、それなら飲める!」

 ほっとしていると、販売機がジージーなり始めたーーかと思うと、今度は激しく左右にガタガタ揺れ始めた!

「な、なに!?」

 あたしが慌てても、三人は落ち着いた表情で販売機を見守っている。

 ガタンッと最後に大きく跳ねて、販売機は静かになった。
 取り出し口がすっと開いて、中から缶ジュースを持った手が四本伸びてくる。

「て、手?!」

「なにやってんだよ。早く受け取ってやれ」

 あたしが後ろとびに驚いている間に、三人ともさっさと缶ジュースを受け取っていた。

「ど、どうも……」

 おそるおそる缶ジュースを受け取ると、手はすっと販売機の中に戻っていく。

「な、中に誰か入ってるの……?」

 販売機を横から見て見ると、確かに少し厚みがあるような……。

 ーーで、でも、手が四本ってことは、二人入ってるの?そんなに入れるの?

 ぎゅうぎゅう詰めだから、缶ジュースを渡すのにあんなにガタガタ揺れるんだろうか……?

「腕だけだがな、入ってるのは」

「う、腕だけ?!」

 ーー腕だけって……腕だけ?え、えぇ?!

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