あたしは美味しくない!!



「腹が膨れるようなもん」

「へ?」

「あんたは知らない方がいいものだ」

 二人とも言葉を濁して、そのまま飲み干してしまう。

 ーーえと、人間が飲まないようなものってこと、よね……。

「あんたも飲んだらどうだ」

「う、うん」

 ーーでも、なぁ……。

 プルタブが開けられないのだ、実は。
 カチカチと何度かプルタブに爪を引っかけようとするが、上手く行かない……。

「……貸してみろ」

「あ」

 あたしの手から缶を取り上げると、プシュッと簡単そうにプルタブを開けて渡してくれる。

「ありがと」

 受け取って、缶に口をつける。

「あ、美味しい!」

 少しとろっとした舌触りで、自然な甘味とほんのり酸味が感じられる。

「気に入ったか?」

「うん!飲んだことない味だけど、美味しいわ」

「そうか」

 にこりと、笑ってくれた。

「じゃあ、宿とりにいくか」

「そうですね。安い所を探さないと」

「魔女の連中、すぐに足元みて値段つり上げやがるからなぁ」


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