あたしは美味しくない!!



「あんたが相手の話にまんまと乗るからだ」

「んなこと言ったって、あいつら口が上手いんだよ」

「うちにも、口の上手いやつが居るだろう。あんたはでしゃばるな」

「ちぇっ。わかったよ、任せる」

 そう言って、二人ともウィルの方を見る。ウィルは肩をすくめるだけだったが、了解の意味だろう。

「ウィルが一番、交渉上手なんだ?」

「ああ。嘘偽りお世辞に愛想も、すらすら出てくるもんな。その口は」

「人聞きの悪い言い方しないでくださいよ。あなたと違って、臨機応変に状況に合わせて言葉を変えたり遠回しな言い方をしているだけです」

「……」

 ーーウィルが口が上手いっていうのは、本当みたいね……。交渉は、ウィルに任せておけば大丈夫そう。

「ところで、お金って、どうしてるの?」

「どうって?」

「どうやって、稼いで?るの?」

 ーーあたしは、毎月おこづかいをもらって貯金してるけど、みんなは、どうしてるんだろう?

「旅の道中で手に入れた物資を売ったり、魔女たちと交渉して物資調達の代金を貰ったり、だな」

「この街である程度稼いでおいた方がいいですね。少し出費しますから」

「だな。ーーお。あの宿でいいか」

 カインが立ち止まって、少し先にある建物を指さした。

< 66 / 92 >

この作品をシェア

pagetop