あたしは美味しくない!!
「……ねぇ。人間ってそんなに、その……珍しいの?」
『美味しそうなの?』とは、訊けなかった。
「……ああ。人間は、まず街の外に出ないからな。子供なら、なおさら珍しい」
「そうなんだ……」
まだちらちらと視線が気になるけれど、襲ってきたり……は、なさそうだから、とにかく気にしないようにしよう。
「いらっしゃいませ~。あら?うちは食べ物の持ち込み厳禁よ?」
ウェイトレスらしき魔女が、あたしを指さして軽く眉をしかめた。
「……いい加減にしろ。こいつは食べ物でも生き餌でもない。手出しするなら容赦しない」
地を這うような低い声と、店全体を見渡す鋭い目つきに、店中が静まり返ってしまった。静かになったのを見て、ダネルは睨むのをやめる。
こほん、と一つ咳払いをして、ウィルが愛想のいい声を上げた。
「あの、メニューをもらえますか?」
「え、ええ。ごゆっくりどうぞ~」
魔女はそそくさと店の奥に戻ってしまった。それを機に、ちらほらと話し声がして、また店内が賑わい始める。
「……空気を悪くしたな。すまない」
「ううん。怒ってくれて、あたしは嬉しかったよ。ありがとう」
「ほら、メニューも来たし、さっさと選ぼうぜ?」
全員が、テーブルの真ん中に広げたメニューに目を移す。