あたしは美味しくない!!



「これと、これと、これ」

 カインが広げたメニューを指さしながら注文していく。きっと、あたしに気を使って『これ』って言ってくれてるんだと思う。

「……あと、これとこれを」

 奥に戻りかけたウェイトレスさんを呼び止めて、ダネルがなにか追加していた。

「お前も喰うのか?珍しいな」

「ダネル、普段は食べないの?」

「悪魔族は、基本的には食事を必要としない。飢えても死なないからな」

「お腹、空かないの?」

「特に気にしたことはないな」

 ーーお腹が空くって、気にするとか気にしないとか、そういう問題だっけ……?

「じゃあ、なんにも食べないの?」

「いや。食べられなくはないからな。気に入れば、味わうことを目的には食べる」

「そっか。じゃあ、美味しいって感じたりするのね」

 ーーお腹いっぱいになるのも幸せだけど、美味しいって感じるのも幸せだもんね。

「ああ。美味い不味いは分かる」

「それなら、食事は楽しいね」

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