あたしは美味しくない!!



 厨房で牛柄スーツを着て飼育されている人間を想像して、ふるふると首を振った。

 ーーな、なんかやだ……。

 そんなことを考えていると、あたしとダネルの食事が運ばれてきた。

 あたしのお皿にはーー

「……え」

 ビー玉ぐらいのコロンとした目玉が五つ、彩りの野菜と共に乗っていた。

 思いの外、目玉にはこんがりとした焼き目が付いている。

「……目玉、焼き?」

「ああ。目玉焼きだぞ」

「いや、あの……」

 これじゃない。と皆まで言えずに絶句する。

 ーーたしかに『目玉焼きなら食べられる』とは言った。言ったけど!あたしの言う目玉焼きっていうのは、鶏の卵を溶かずに焼いて、こう……こう、焼き上がった見た目が目玉に見えるってもので、ほんとに目玉を焼いたものって意味では……!!

「……カイン。代わりに喰ってやれ」

 あたしが頭を抱えて困っていると、ダネルが助け船を出してくれた。

「あ?ミカ、それ食えるんじゃなかったのか?」

「鶏の卵を焼いたものだと思ったらしい」

 ーーえっ?ダネル、なんで分かったの?

 思っていたことを言い当てられて、訊こうと口を開く前にーー

「はぁ?なんで鶏の卵焼いたのが、目玉焼きになるんだよ?」

 カインに呆れたように訊ねられる。

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