スイートなメモリー
三十歳独身。
入社八年。
昨年から係長。
化粧品メーカーの広告部で、通信販売のカタログやwebサイトのテキスト部分を担当している。
部下は三名。
それほど忙しい部署ではないけれど、ミスは極力減らしたい。
出世欲が強いわけではないけれど、任された仕事には責任を持ちたい。
気がついたらすっかりお局扱いで「前崎さんは仕事が彼氏だからね」なんて上司から言われるけれど、別にそういうわけじゃない。
長年つきあってきた恋人と、お互いの仕事が忙しくてすれ違ってしまい、なんとなく別れてしまった。
彼も結婚まではまだ考えていなかったようだったし。
それから新しい恋人ができていないというだけで、別に仕事が彼氏なわけじゃない。
私だって……。
彼氏のひとりくらいは欲しいのだ。
私だって。
結婚退職しますとか言ってみたいのだ。
なのにどうして、仕事が彼氏の口うるさい「係女王」なのか。
まことに残念に思います。
時計を見る。十時三十五分。
昼休みまでにはまだまだ時間がある。
ぐう。
この空腹は耐えがたい。
私はジャケットのポケットにそっとサンドイッチを入れて、非常階段に向かう。
高いところ、好きじゃないんだけどな……。
入社八年。
昨年から係長。
化粧品メーカーの広告部で、通信販売のカタログやwebサイトのテキスト部分を担当している。
部下は三名。
それほど忙しい部署ではないけれど、ミスは極力減らしたい。
出世欲が強いわけではないけれど、任された仕事には責任を持ちたい。
気がついたらすっかりお局扱いで「前崎さんは仕事が彼氏だからね」なんて上司から言われるけれど、別にそういうわけじゃない。
長年つきあってきた恋人と、お互いの仕事が忙しくてすれ違ってしまい、なんとなく別れてしまった。
彼も結婚まではまだ考えていなかったようだったし。
それから新しい恋人ができていないというだけで、別に仕事が彼氏なわけじゃない。
私だって……。
彼氏のひとりくらいは欲しいのだ。
私だって。
結婚退職しますとか言ってみたいのだ。
なのにどうして、仕事が彼氏の口うるさい「係女王」なのか。
まことに残念に思います。
時計を見る。十時三十五分。
昼休みまでにはまだまだ時間がある。
ぐう。
この空腹は耐えがたい。
私はジャケットのポケットにそっとサンドイッチを入れて、非常階段に向かう。
高いところ、好きじゃないんだけどな……。