スイートなメモリー
朝のコーヒーショップでの一件以来、どういう訳か俺は前崎係長のことが気になって仕方なかった。
ここのところ俺は、自分の「どういう訳か」というのに振り回されている。
どういう訳かわからないのだ。
おそらくきっと、雪花女王の「そういう人こそマゾだったりするよね!」という天真爛漫な一言が気になってならないのだ。

前崎係長を観察するために早く来たり残業したり、遅刻しないように早寝するため、四○四からも少しばかり足が遠のいている。
前崎係長を好きなのかどうかと言われたら、正直良くわからない。
どういう訳か、ただただ気になる。
係女王様と呼ばれていて、仕事でミスしたり遅刻したりする俺を叱りつけたりして、自身の仕事もしっかりやっているあの人が、人の見ていないところでは結構おっちょこちょいだったり、それを見られて照れたりする姿。
それに目を奪われる。

良く見ると肌も綺麗で、スタイルだって悪くない。
きちんとメイクして、もっと男を意識した格好をすれば、実はかなりいい女なのではなかろうか。

あの白い肌にはきっと黒いエナメルが良く映える。
正直に言おう。

前崎係長がどんな女なのか興味がある。
これは俺の勝手な妄想だが、おそらく前崎係長はそれほど男性経験も多くないだろう。きっとSMなんかとはかけ離れた非常にノーマルな生活を送って来たに違いない。
お局的なキャリアウーマンとして仕事に邁進してきたであろう彼女が、もしも男で変わるなら、どう変わるのか見てみたい。

そして、その変貌に手を貸すのが俺であったら。

それはとても楽しいのではなかろうか。

彼女を落としてみたい。
俺の奴隷にしたい。
 
< 21 / 130 >

この作品をシェア

pagetop