スイートなメモリー
まだ一緒に入るのは恥ずかしいので、お風呂はひとりで入らせてほしいと打診してみる。
そうしたら、自分の方が早いだろうし待たせるのは悪いから、と三枝君は先にシャワーを浴びてきてくれた。
お風呂に入ろうとしたら呼び止められる。
「そのワンピース、俺が脱がせちゃダメ?」
断る理由があるとしたら、恥ずかしいというだけで、そう言ったら三枝君はなおさら脱がせたいというので身をゆだねる。
「女の人の背中ファスナーって凄く脱がせたいと思ってて。ほら、男のロマンというやつです」
そんなことを言いながら、抱きしめられて、背中に手が回される。
不器用にファスナーを探り当てた手が、ほんの少しづつファスナーを下げてゆき、もう片方の手が私の背中にじかに触れてゆく。
鼓動が早まっていくのを知られるのが恥ずかしくて、ワンピースが床へ落ちる前に自分の手で受け止めて三枝君から離れた。
「やっぱり、脱がされるのとかって恥ずかしい」
にこにこしながら三枝君が言った。
「もっと恥ずかしいことなんか、この先たくさんありますよ」
「やだもう」
その時私は、三枝君のこの言葉の意味を完全にはき違えていた。
だってそんな。
そんなのこの時点で想像がついているほうがおかしいというものだ。
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