スイートなメモリー
シャワーを浴びてバスローブに着替えて出て行ったら、三枝君が冷蔵庫からビールを出してくれていた。
「昼間っからビール飲んでこんなとこいるなんてねえ」
「しかも会社の上司とだなんて不健全もいいところですね」
「私なんで出来の悪い部下とこんなことになってるんだろう」
「俺が嬉しいから良しです」
雰囲気にも酔っているからだんだん口は軽くなる。
ベッドに腰掛けていた三枝君が、私の手を引いて隣へ座らせる。
引き倒されて横になり、耳元でささやかれる甘い言葉。
「本当に可愛い。今手の中にいるなんて嘘みたい」
「嘘じゃないから、そんなこと言うのやめてよ」
「だって本当に可愛いんだもの。……縛り付けたい」
「好きにしたらいいじゃない……」
 三枝君が私の上で、裸の私を見下ろすようにして目を見開いた。
「好きにしていいって言った?」
「言ったわよ?」
「それはそれは……」
目を閉じた私の首元に、三枝君が口づけるのを感じる。
耳元から側頭部を撫でられ、三枝君の手が枕の下に差し入れられる。
え? 
そこからは不自然な金属音がした。
じゃらり。
首筋に冷たい感覚が走り、私は飛び起きた。
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