スイートなメモリー
それはともかく俺はなぜこんなあからさまに馬鹿にされている?
雪花さんがアイスティーを一口飲んでから俺に向き直る。
「初めてで嬉しいのはわかるけれど、浮かれすぎて足下すくわれるなって言ってるのよ」
「けど、がーっといっちゃえって言ったの雪花さんじゃないですか。俺に奴隷が出来たら雪花さんはもっと喜んでくれると思ってた」
またため息をつかれる。美咲も意味深な笑みを浮かべている。
なんだこれ。
「別に喜んでない訳じゃないわ。やっと学人さんがご主人様になれてよかったと思ってるわよ。だけどねえ。その周りを見るのすら忘れた浮かれっぷりには正直飽きれる。学人さん気がついてないでしょう。今日貴方、自分の話ばかりしているわ」
言われてみれば確かにそうだ。
 俺は今日、自分の話ばかりしている。
少し反省。
「でも嬉しいんですよ」
俺の首輪をこれまで嵌めていてくれた球体関節人形を手に取り、アクセサリーが無くなって寂しくなった首元を撫でる。
雪花さんが、同じように美咲の首元を撫でて俺を見やった。今日の雪花さんは美咲がいるせいか、女王様口調を崩すことが無い。
「嬉しいのはわかるわ。だけど学人さんの話だと、彼女をどうしたいのかがさっぱり見えてこないのよ。手に入れて嬉しい、って浮かれているのだけは伝わるのだけど。学人さんが彼女を受け入れるつもりがないのなら、そのおつきあいは不毛だわ」
不毛? 
俺が彼女を受け入れるつもりがない? 
そんな訳は無い。
俺は芹香さんをとても可愛いと思っているし、奴隷として調教したいと望んでいるけど、恋人としてだってもっと親しくなりたいと思っているさ。
芹香さんも同じように思っていてくれたら俺はもっと嬉しい。
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