スイートなメモリー
もちろんそんな「あたしって学人さんのなんなわけ」みたいな不毛な会話だけで泣かせていたわけではない。
俺のご主人様スキルと、芹香さんの奴隷パラメータも上げるべく、基本的なところからSMプレイをやりなおしていた。
そうはいっても芹香さんはマイ奴隷ではあるけれど、それ以前に愛おしい恋人でもあるわけで「さすがにそこまではついていけません」とギブアップされることのないよう、行きつ戻りつ、時にはごくごく普通の恋人同士のように抱き合って過ごす日も作った。
芹香さんはそれはそれで不安になるようで「飽きたの? やっぱり私じゃつまらないの?」と自信の無さをあらわにし「そんなことないよ」という答えを俺から引き出すまで引き下がらなかった。
俺だってどこまでやっちゃっていいのかどうかわからなくって不安なのよ?
俺だって、芹香さんがなにを考えているのかわからなくって不安で仕方なかった。
自分が仕事に対してあまり熱心さを見せていないというのは、自覚している。そしてそれを上司であるところの芹香さんが注意しなくてはいけないというのもわかってる。
芹香さんが俺に対してどのように接したらいいのか迷っているのも、わかってる。
だけれども、そうはいっても、周りから「なんで三枝あんなに怒られるのかね」と不思議がられるくらいに怒られるいわれはないと思ってたのだ。
あまりにも怒られるから、さすがにこちらも気分を害することもある。
だから食事の時にでも文句を言おうとするのだが、二人きりで会う時には係女王様はどこへやら、可愛らしい芹香さんなものだから、俺も怒れなくなってしまう。
ところがだ。
俺は昨日、どうして芹香さんがそんな風に昼の顔と夜の顔を使い分けてるみたいにしてるのか、わかっちゃったんだ。
ああもう本当に可愛い。
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