ラッキービーンズ【番外編】
「あっ、メイさんもうドコ行ってたんですかー。急にヤギーと消えるなんてメイさんってば」

「えっ、あの消えたわけじゃなくてコンビニに……」


リアちゃんがムフフと意味深な笑みを浮かべながら、突っ込んでくるから慌ててコンビニの袋をテーブルに置いた。


「えぇ~コーヒー? カクテルとか買ってきて欲しかったあ」

「ご、ごめんね。リアちゃん飲みすぎで具合悪かったんじゃ……」

「あ、もう治ったみたいです。ご心配おかけしましたぁ」

「突っ立ってないで座んなよ。日向サン」


突如、水嶋に声をかけられてビクッとした。

他人行儀な「日向サン」って呼び方に一瞬、怒っているのかと不安になったけれど、よく考えたらリアちゃんの前で「メイ」だなんて呼び捨てにできるわけない。


あれ、今までどう呼ばれていたんだっけ。


「コーヒー、ぬるいね」

「ご、ごめんなさい」


ガサゴソとビニール袋から缶コーヒーを3つ取り出して机の上に並べながら、水嶋が何気なく言ったひとことに確信する。


やっぱり怒ってる、と。


普段の水嶋だったら絶対にこんな嫌味みたいな言い方はしない。

実際、一人でマンションに入りづらくて、エントランスで悩んでいるうちに、すっかりコーヒーは冷めきってしまっていたのだけれど。
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