ラッキービーンズ【番外編】
街灯の向こうから水嶋の姿が現れた。

私もかなり一生懸命走ってきたけれど、それは水嶋も一緒だったらしく、かなり息が切れている。


顔を見合わせたまま、しばらくお互い息を整えていた。

その間がなんだか可笑しくて、私が笑いだすと水嶋もちょっと笑った。


その後、しっかり「何考えてんだよ」って怒られたけれども。

だけど私は、走らなきゃいけない時があるって思ったんだ。


何事も行動に移すのが遅い私だから、たまには走らないと大切なものを失っちゃうかもって思ったんだよ。

そう言葉に出すと、それが水嶋のことを指してるって分かったのか、水嶋はそれ以上何も言わず、困ったような表情をして、私の額を軽くこづいただけだった。


それから二人で並んで、水嶋のマンションまで歩いた。

てっきり部屋に入るんだと思ったのに、水嶋は私をマンションの駐車場まで連れて行った。


通勤は電車だけれど、水嶋は車も持っている。

付き合うようになって、私も何度か乗せてもらった。


「せっかくだから、ツリー見に行こうぜ」


怒ってるはずの水嶋が嬉しい提案をしてくれたから、それだけで泣きそうに嬉しくなってしまった。

早く誤解を解かなきゃいけないって思ってたけれど、そんな必要もないような気がしてきた。


行動だけで、水嶋は私のことを理解してくれている。
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