ラッキービーンズ【番外編】

二人きりの夜

結構な時間、二人でツリーを眺めていたと思う。

寄り添う水嶋が私の頬に手を当てて、「冷たい」と言ったからそれで帰ろうかって話になった。


当然、水嶋のマンションに帰るんだと思ったのに、水嶋が私の手を引いていったのは車ではなく、ホテルのエントランスだった。

白くて小さなお城みたいなヨーロピアン調のホテル。


「え? 部屋取ってあるの!?」

「そうだよ」

「なんで!? いつの間に!?」


だって最初はクリスマス予定あるかもって言ってたくらいだったのに。

確かにちょっと郊外だけれど、それでもクリスマスのこんな日に、こんな可愛いホテルの予約を取るのは大変だっただろう。


私があまりに驚いていたから、水嶋はちょっと苦笑した。


「実は単なる偶然。ここのツリー教えてくれたヤツが彼女と泊まる予定だったのに、出張で来れなくなっちゃって代わりに譲ってもらった」

「うわぁ、ご愁傷さま……。こんな可愛いホテル、きっと彼女も喜んだと思うのに」

「俺はメイの喜んだ顔と驚いた顔の両方が見れて、すっげー得した気分だけど。ま、楽しまなきゃ譲ってくれたヤツにも悪いし」

「うん」


普段はこんな時間に人なんかいないと思うけれど、フロントには今からチェックインするカップルもチラホラいて、やっぱり今日は特別な日なんだと今更ながら胸がわくわくと躍った。
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