ラッキービーンズ【番外編】
「んう……っ」


最初から奪うように口内を侵食され、キスの合間に思わず吐息がこぼれた。

だけど、水嶋は唇を離してはくれない。


角度を変えて何度も、深く口づけてくる。

唇の端からつうっと唾液がこぼれる感覚がする。


普段、そこまで激しいキスをしたことがなくて、こんなことにまで興奮を覚える自分は、もうどうにかなっちゃったんじゃないかと思う。

感覚全てが研ぎ澄まされて、キスの水音かお湯が揺れているだけなのか、聴覚から入ってくる音にさえ、感じてしまう。


水中の奇妙な浮遊感の中で、体中を探られるように撫でまわされて、いつの間にかもう、声が我慢できなくなっていた。

バスルームに甘い声が反響して、まるで自分のものじゃないみたいだ。


水嶋もすごく興奮してるみたいだった。


最初はお風呂でなんて考えられなかったくせに、本能に流されて、もうここでこのまま最後までして欲しい……なんてはしたないことを考え始めていた時だった。

ふっと唇と手が私から離れていって、私は大きな口を開けて酸素を取り込みながら、どうしてやめたんだろうと水嶋の方を振り返った。


熱っぽい瞳と視線が絡み合う。

私の瞳もきっと、水嶋のそれと同じくらい、もしかしてそれ以上に潤んでいるに違いない。


その証拠に水嶋は困ったように「そんな瞳で見ちゃダメ」と笑うと、片手で私の目を覆い隠した。
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