渇望の鬼、欺く狐
***



 スヤスヤと無邪気な寝顔を見せる旭。

 昼間からの疲れの為か、旭は普段よりも早い時間に眠りについてしまった。

 そんな旭の寝顔を、湧き出す愛しさを感じながらに撫で付ける。



「可愛いよねー」



 視線を寄越した事で、雪もまた旭に視線を送っていた事を知った。



「寝顔だけは大きくなっても変わらないね」



 あの日。

 森で泣いていた旭を拾ってから今日までの間に、旭はこんなにも大きくなってしまったけれど。

 寝顔だけは、あの日と何一つ変わらない。

 きっとこの先、何年経っても、このあどけなさや無邪気さを残して、穏やかに眠るのだろうと思う。



「ねー、藍ー?」



 肩に寄せられた雪の頭。

 そうして私に寄りかかり甘えるクセに、雪の視線はしっかりと旭を捕らえていた。

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