渇望の鬼、欺く狐
#08 狐と幼児
***
新緑の芽吹く五月。
この日、いつもと同じように狐は社を訪れていた。
だけどいつもと違ったところは、狐があたふたとしていたところにあるだろうか。
そしてもう一つ、いつもと違ったところは。
「母ちゃん、お願い!」
「しつこいよ、旭。駄目だと言ってるだろう」
鬼と幼児のこんなやりとり。
今日、社を訪れた狐に、鬼は買出しを頼んだ。
そこまでは普段と同じ流れだった。
だけどそこで幼児が口にしてしまったのだ。
『俺も買出し行きたい!』
すかさず却下した鬼に、幼児は『お願い』と縋り付いて。
鬼が首を縦に振る事もないままに、やりとりが続き今に至る。
「何で駄目なの? 雪はいっつも行ってるよ?!」
「雪は体力があるからだよ。お前はまだ五歳なんだ。人里へ行って戻ってくる程の体力なんてないだろう?」
「そんな事ない! 俺だって行けるもん!」
繰り返されるやりとりに、狐は何とか口を挟み込もうと努力する。
新緑の芽吹く五月。
この日、いつもと同じように狐は社を訪れていた。
だけどいつもと違ったところは、狐があたふたとしていたところにあるだろうか。
そしてもう一つ、いつもと違ったところは。
「母ちゃん、お願い!」
「しつこいよ、旭。駄目だと言ってるだろう」
鬼と幼児のこんなやりとり。
今日、社を訪れた狐に、鬼は買出しを頼んだ。
そこまでは普段と同じ流れだった。
だけどそこで幼児が口にしてしまったのだ。
『俺も買出し行きたい!』
すかさず却下した鬼に、幼児は『お願い』と縋り付いて。
鬼が首を縦に振る事もないままに、やりとりが続き今に至る。
「何で駄目なの? 雪はいっつも行ってるよ?!」
「雪は体力があるからだよ。お前はまだ五歳なんだ。人里へ行って戻ってくる程の体力なんてないだろう?」
「そんな事ない! 俺だって行けるもん!」
繰り返されるやりとりに、狐は何とか口を挟み込もうと努力する。