渇望の鬼、欺く狐
よくよく見れば、野うさぎのうち二匹は、体もそれなりに大きい。
野うさぎに手をかけてから、すでに数年が経過している事。
こちらを見て怯えながらも、逃げようとはしない様子。
そこから導き出す仮定に辿り着こうとも、取り立てて狐が慌てる様子も見当たらない。
「ねー、あれ触ってみていいー?」
好奇心に満ちた目で訊ねながらも、幼児はすでに野うさぎの方へ歩み寄ろうとしていた。
咄嗟に「駄目だ!」と口に出した狐に、幼児は不満そうな表情を向ける。
「何で駄目なのー?」
「え? あ、えぇと……」
『くれぐれも結界から出ないように、気を付けてやって欲しい』
狐の頭に、社を出る前に鬼に言われた言葉が浮かぶ。
と言って、先程幼児には、結界の存在について言わないでおこうと決めたところでもある。
少し悩んだ狐は、閃いたように言葉を発した。
「あのな、旭。あいつら、大人しそうに見えて、実は凶暴なんだよ」
「……じっとしてるよー?」
「怖がりなんだ。で、すぐに噛み付くんだよ」
「え……」
幼児の目が、不安気な物に移り変わりを見せて。
その事を感じ取りながら、狐は幼児には気付かれぬように、安堵の溜息を漏らした。
野うさぎに手をかけてから、すでに数年が経過している事。
こちらを見て怯えながらも、逃げようとはしない様子。
そこから導き出す仮定に辿り着こうとも、取り立てて狐が慌てる様子も見当たらない。
「ねー、あれ触ってみていいー?」
好奇心に満ちた目で訊ねながらも、幼児はすでに野うさぎの方へ歩み寄ろうとしていた。
咄嗟に「駄目だ!」と口に出した狐に、幼児は不満そうな表情を向ける。
「何で駄目なのー?」
「え? あ、えぇと……」
『くれぐれも結界から出ないように、気を付けてやって欲しい』
狐の頭に、社を出る前に鬼に言われた言葉が浮かぶ。
と言って、先程幼児には、結界の存在について言わないでおこうと決めたところでもある。
少し悩んだ狐は、閃いたように言葉を発した。
「あのな、旭。あいつら、大人しそうに見えて、実は凶暴なんだよ」
「……じっとしてるよー?」
「怖がりなんだ。で、すぐに噛み付くんだよ」
「え……」
幼児の目が、不安気な物に移り変わりを見せて。
その事を感じ取りながら、狐は幼児には気付かれぬように、安堵の溜息を漏らした。