渇望の鬼、欺く狐
#09 狐の過去、決意
それはもう、十数年以上も前の話。
生まれたての頃の記憶など、狐にはないに等しいが、気付いた頃には後ろの左足は上手く使えなかった。
生まれつきによる物だから、狐にとってはそれが普通だったし、兄妹や両親に比べ見劣りするものの、不恰好ながらに歩く事は出来た。
少しの距離なら走る事も可能だった。
狐は兄妹たちに対して、劣等感を抱いていたように思う。
狐は極端に狩りが下手だった。
野鼠を追いかけても、野うさぎを追いかけても、一本不自由な足がある為に上手く捕らえる事が出来ない。
気配を隠そうとも、歩き方が不恰好なばかりに物音を立ててしまうし、走り去る獲物を追いかけても、追い付く事も出来ないのだ。
すぐ傍では、兄妹たちは、狩りに成功したと喜んでいるのに。
自分だけが。
その輪に入り、共に喜ぶ事が出来ないでいる。
両親に褒められる事が、叶わないままでいる。
その事実は、狐の劣等感を生み出し増殖させて。
いつしか狐に、孤独感すら与えるようになってしまっていた。
狩りに失敗した狐に、両親が捕った獲物を分けてくれるけれど。
その優しさは嬉しくもあり、同時に悲しくもあった。
呆れられているんじゃないかと、そんな風に思えて。
狩りをしている時以外は、狐は両親や兄妹に目いっぱい甘える事が出来た。
何の気兼ねもなく、ひたすらに甘えても、皆でそれを受け入れてくれる。
甘える事が自分の役目だとでも言うように、皆に擦り寄って。
狩りの際に感じる孤独感を紛らわすように、とにかく甘えて媚びて。
その時間は堪らなく幸せで。
そうしている間は、狩りは下手だし、歩く事もあまり上手ではないけれど。
皆が居るから、それでいい、と。
狐はそんな風に思う事が出来ていた。
生まれたての頃の記憶など、狐にはないに等しいが、気付いた頃には後ろの左足は上手く使えなかった。
生まれつきによる物だから、狐にとってはそれが普通だったし、兄妹や両親に比べ見劣りするものの、不恰好ながらに歩く事は出来た。
少しの距離なら走る事も可能だった。
狐は兄妹たちに対して、劣等感を抱いていたように思う。
狐は極端に狩りが下手だった。
野鼠を追いかけても、野うさぎを追いかけても、一本不自由な足がある為に上手く捕らえる事が出来ない。
気配を隠そうとも、歩き方が不恰好なばかりに物音を立ててしまうし、走り去る獲物を追いかけても、追い付く事も出来ないのだ。
すぐ傍では、兄妹たちは、狩りに成功したと喜んでいるのに。
自分だけが。
その輪に入り、共に喜ぶ事が出来ないでいる。
両親に褒められる事が、叶わないままでいる。
その事実は、狐の劣等感を生み出し増殖させて。
いつしか狐に、孤独感すら与えるようになってしまっていた。
狩りに失敗した狐に、両親が捕った獲物を分けてくれるけれど。
その優しさは嬉しくもあり、同時に悲しくもあった。
呆れられているんじゃないかと、そんな風に思えて。
狩りをしている時以外は、狐は両親や兄妹に目いっぱい甘える事が出来た。
何の気兼ねもなく、ひたすらに甘えても、皆でそれを受け入れてくれる。
甘える事が自分の役目だとでも言うように、皆に擦り寄って。
狩りの際に感じる孤独感を紛らわすように、とにかく甘えて媚びて。
その時間は堪らなく幸せで。
そうしている間は、狩りは下手だし、歩く事もあまり上手ではないけれど。
皆が居るから、それでいい、と。
狐はそんな風に思う事が出来ていた。