渇望の鬼、欺く狐
そしてふいに、赤子が狐に抱き着いてきた瞬間。
その感触に触れ、体温に触れて。
離したい衝動と、離せない躊躇いを再び感じた時。
狐は、ようやく気付いたのだ。
否、正しくは向き合う事が出来たのだろう。
心の根底に仕舞い込んで、覗く事をしなかった事実と。
家族に捨てられた自分。
恐らく、家族の誰かに捨てられたのであろう赤子。
鬼に絶大な信頼を抱き、鬼の存在を己の唯一と認めている部分も。
きっと鬼が居なければ、生きる術を見失うのであろう部分も。
全部一緒だった。
赤子は狐であり、狐は赤子だったのだ。
同じ立場に居ながら、鬼は赤子を甘やかしたから。
何度も狐の前で、赤子を優先してみせたから。
それ故に、赤子に対しての敵対心や競争心が、狐の中で強くなってしまった事も事実だろう。
ただそれは、狐の無意識による感情だったけれど。
自分と似すぎているが故に、唯一の存在である鬼から愛情を注がれる赤子が疎ましかった。
憎らしかった。
きっと赤子も自分に対して、同じ感情を抱いているとすら思っていた。
だからこそ赤子の行動は、狐を驚かせる要因ともなったのだけれど。
その感触に触れ、体温に触れて。
離したい衝動と、離せない躊躇いを再び感じた時。
狐は、ようやく気付いたのだ。
否、正しくは向き合う事が出来たのだろう。
心の根底に仕舞い込んで、覗く事をしなかった事実と。
家族に捨てられた自分。
恐らく、家族の誰かに捨てられたのであろう赤子。
鬼に絶大な信頼を抱き、鬼の存在を己の唯一と認めている部分も。
きっと鬼が居なければ、生きる術を見失うのであろう部分も。
全部一緒だった。
赤子は狐であり、狐は赤子だったのだ。
同じ立場に居ながら、鬼は赤子を甘やかしたから。
何度も狐の前で、赤子を優先してみせたから。
それ故に、赤子に対しての敵対心や競争心が、狐の中で強くなってしまった事も事実だろう。
ただそれは、狐の無意識による感情だったけれど。
自分と似すぎているが故に、唯一の存在である鬼から愛情を注がれる赤子が疎ましかった。
憎らしかった。
きっと赤子も自分に対して、同じ感情を抱いているとすら思っていた。
だからこそ赤子の行動は、狐を驚かせる要因ともなったのだけれど。