渇望の鬼、欺く狐
 そんな私へ、狐はまた縋るような声を発する。



『お姉さん、お願い! 俺、お姉さんしか居ないんだよ!』


『そもそも野生の狐は単独行動するものだろう?』


『でも傍に居たい……。お願い、俺、お姉さんの言う事何でも聞くから……』


『そう言われてもねぇ……』



 多分心のどこかで、このやり取りに面倒臭さを覚えてしまったのだろうと思う。

 こちらが飼う気がないと告げても、狐はそれを受け入れようとはしないし。

 それどころか、こちらが何かを口にする度に、抱き着く腕に力を込めてくるのだから。

 

『……何度言われても、私はお前を飼う気はないよ』


『お姉さ……』

『でも』



 狐を遮って発した声。

 狐はやはり、縋るような視線をこちらへと寄せていた。
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