渇望の鬼、欺く狐
 懐く要因が私にあったと言うなら、生き延びた要因すらも私にあったのか。



 それを理解して複雑な気持ちになってしまう理由は、未だ私に抱き着いたままの雪に対して、少々鬱陶しいと思えているからなのだろう。



『俺、藍のお陰で生きてこれたんだね! ありがとう! やっぱり藍大好き!』


『それはもう聞いたよ』


『でも何回も言いたいんだよ』



 私の妖力を吸って生きてきたという事実を知った雪は、何だか拍車がかかってしまったようにも感じられる。

 勝手にしろとは言ったものの、この分だと本当に朝から晩まで付き纏われそうだ。

 簡単に予想出来る事柄。

 一つ息を吐いた私は、雪へと向けて口を開いた。



『雪』


『うん?』


『いくつか取り決めをしておこうか』



 キョトンとした表情を浮かべた雪が、小さく頷いて。

 それと共に先を紡いだ。
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