渇望の鬼、欺く狐
#05 鬼と狐と赤子
***



 日差しの降り注ぐ八月。

 いつしか季節は夏を迎えていた。

 私や雪は平気だけれど、旭にとってこの季節は中々辛い物があるらしい。

 日中は、拭けども拭けども汗をかく旭。

 最近では川の中で遊ばせて汗を水で流しつつ、木陰で過ごす事が日課となっていた。

 そして。



「旭、ほら」



 一緒に川の中に入って、旭と楽しそうに遊ぶ雪。

 あんなにも旭に対して敵対心を抱いていたにも関らず、一体いつの間に打ち解けたのだろうと思いながらも。



「ゆーゆ、めっ!」


「何だよ、頭から水被った方が気持ち良いだろ?」


「めっ!」



 仲が良いなら、それに越した事はないのかもしれない、と。

 そう思えてしまう事もまた事実だった。




 
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