『私』を知る彼
「それに、あと5分でこれタダになるし。」
そして、「はい」と唐揚げ弁当を私に手渡す店員
「はっ?」
「俺あと5分で交代なんだけど、交代のヤツ来ないの。
だから、後ろで一緒に食べてよ。ビール奢るから」
子犬のような人懐っこい笑顔の彼は「こっち」と私の手を取り、『staff only』と書かれた扉をあけ、中に入る。
ブーンと冷蔵庫のモータの音がするその空間は、人ひとりすれ違えるくらいの広さで、店内の明るさの10分の1くらいだろうか。