鬼の花嫁
郷
先ほどまで居た場所とは全く違う。
絵の具を零したような
鮮やかな夕焼けが空一面に広がり、
遠くには山々が連なっていて
瓦の和風テイストの家が並び
まるで江戸時代の街並みを思わせる。
緩やかに流れる小川は
とても澄んでいて綺麗な魚も泳いでいた。
「…綺麗……」
「人間界とは違うだろう」
目の前の美しすぎる
幻想的な世界に見惚れる私に、
微笑を浮かべてそんなことを言う彼。
「ここが俺達、鬼の郷だ」
鬼の…郷……
………………ん?
「えっ!郷!?」
「だからそう言っている」
何度も聞き返す私に
少し面倒になったのか、
卑屈っぽく言われてしまった。