鬼の花嫁
狐の姿が見えなくなってから、
はぁ…と息を吐く涼さん。
「桜…もう大丈……」
「風神さん…!!」
私の必死ぶりに
言葉を発するのをやめる涼さん。
私の瞳は涙で潤んで
視界はボヤボヤだった。
「とにかく風神さんを運ばなあかん…伝令頼みます」
「はい!」
涼さんが周りの人に指示をする。
冷静で的確な判断。
水流さんも、風神さんと私に
応急処置をして涼さんの指示に従う。
…ただ、この場の中で
私だけが落ち付けずにいた。
私だけが、何もできずにいた。