鬼の花嫁
ハッ…!
だ、だめよ桜!
さらわれてるのに何言ってんの!
そう、自分に言い聞かせ、
誰か人がいないか注意しながら
丁度置いてあった草履を履いて庭へ逃げる。
(どこか裏口とかは………)
その時だった
「んん…!!」
いきなり背後から
口を手で塞がれたのだ。
そしてゆっくりと塞いでいた手を離し、
ぎゅう…と抱きしめられる。
「どこへ行くつもりだ」
耳元で囁かれる、
低くてゆっくりとした口調
「か…風神さ………」
声の主の名を呼び、
ゆっくり後ろへ顔を向け……
ひ……っ
目が、目が怖い…!